ワインの格付けとワイン法
ワインは、ぶどうの品種、土壌、気候、栽培方法、収穫時期、製造方法、貯蔵方法など様々な要因が組み重なり個性が生まれます。
そして、ワインの品質を保つために「ワイン法」であり、品質の基準となっているのが「格付け」です。
「ワイン法」がない時代にはフランスのボルドー、ブルゴーニュなどの人気産地の名前を使ったワインが大量に流通していたことがありました。
この対抗策として1930年代にフランスの「ワイン法」の原産地統制名称(A.O.C)が制定しました。
その後、EUに加盟しているワインの産地は2009年に法改正があり、それまでは別々に制定されていたA.O.C.とV.D.Q.S.を合わせて、A.O.P.(原産地呼称保護)という格付け表記になりました。(今まで通りA.O.C.での表記も認められています。)
「格付け」は「ワイン法」より古くから存在しており、フランスのボルドーでは1855年にメドック地区での格付けが行われました。
ボルドーの商工会議所が、当時の名声、取引価格を参考に選出された60のワインが1級から5級までにランク付けされています。
フランス
フランスワインは大きく3つのカテゴリーに分けられています。
AOP(原産地呼称保護ワイン)
IGP(地理的表示保護ワイン)
VIN DE TABLE(テーブルワイン)
AOP(原産地呼称保護ワイン)
AOPとは特殊な地理的環境でつくられたワインのみが名乗ることが許されている厳しい条件の中で生産されているワインです。 一般的に日本に流通しているワインはこのAOPワインにあたります。 AOPの特徴は制定する区画が狭くなればなるほど基準が厳しくなります。 AOPとして認められるには「使用するブドウ品種」「ha当たりの収穫量」「最低アルコール度数」「最高アルコール度数」「醸造法」「栽培法」などがあります。
IGP(地理的表示保護ワイン)
IGPとは日本で言う地酒にあたります。 指定地域内で栽培されたブドウを85%以上使用すれば名乗ることができます。 AOPよりも規制は緩やかで、その地方の特性を生かした気軽なワインです。
VIN DE TABLE(テーブルワイン)
日常的に消費されるテーブルワインのこと指します。
イタリア
D.O.C.G.(統制保証付原産地呼称ワイン)
イタリアワインの格付けの中で一番厳正な規定が設けられています。申請の前に少なくとも5年間、DOCのカテゴリに属していなければなりません。農林省、商工会議所の化学・物理検査を受け、一つ一つのボトルには政府が認可(ガランティータ)したことを証明するシールが貼られます。2010年10月現在で50銘柄が認可されています。
D.O.C.(統制原産地呼称ワイン)
DOCには一定の審査が定められています。すべての生産過程(栽培から出荷まで)はこの規定に基づき行われなればなりません。(生産地、栽培方法、ブドウ品種、最大収穫量、最低アルコール度数、熟成方法など)また瓶詰めの前に、規定された必要条件を満たしているかの審査、化学・物理検査が商工会議所によって行われています。
I.G.T.(地域特性表示ワイン)
1992年に新設。生産地の名前が用いられます。(ピエモンテ、シチリアなど)その地域のブドウを最低85%使うことが義務付けられ、ラベルには使用されている品種と年が記載されているものも多いです。
V.d.T.(テーブルワイン)
最低の基準はあるものの、その他には特に規定はなく、ブドウ品種・生産地の表記の義務はありません。(赤、白などの色の記載は義務付けられている。)DOCG、DOC申請がなされていないワインがこの分類となり、規定にしばられることなく生産されることで、質の高いワインも多く造られています。
ドイツ
プレディカーツヴァイン
プレディカーツヴァインは2007年からの呼称で、それまではクーエムーペー(QmP)と呼ばれていました。
ドイツワインの最上位カテゴリーにあたり、果汁糖度でさらに6つのクラスに分けられます。
プレディカーツヴァインは発酵前に補糖の必要がないほど十分な天然糖分を有するブドウから醸造されており、モスト(未発酵葡萄搾汁)の発酵を途中で強制的に止めることで甘さを出しています。
産地の限定については、原料のブドウが全て同一のベライヒ(生産地帯をさらにいくつかに分けた単位)内で収穫され、そのベライヒが属する生産地帯内で処理されたものでなければならないと定められています。
クヴァリテーツヴァイン
「Q.m.P」と略されることもある、ドイツワインの中でも最高峰クラスに位置しています。
ドイツワイン法で指定されている13の生産地のうち、ひとつの生産地のブドウを100%使用しなければならなく、ラベルには必ず生産地域を表示しなければなりません。
クヴァリテーツヴァインはプレディカーツヴァインより規制が緩く、ラントヴァイン、ドイチャーワインと同様で補糖が認められています。
ドイツワインの中でもっとも生産量が多い格付けとなっています。
ラントヴァイン
テーブルワインのひとつで日本でいうところ地酒にあたります。
ラントヴァインのラントとは“土地”を意味しており、19の地域がラントヴァインとして指定されています。
味わいはトロッケン(辛口)、中辛口(ハルプトロッケン)に限られます。
ドイチャーワインより地方の特色をもっているため個性があります。
使用するブドウは指定地域の85%以上使用しなければならず、エチケットには地域名が表示されます。
ドイチャーワイン(テーブルワイン)
テーブルワインのひとつで、以前のターフェルヴァインに相当します。
ドイツ国内で生産、収穫されたブドウを原料としていれば、どのワインもこの表示をすることができます。
他のワイン生産国と比べると、ドイツではこのカテゴリー(テーブルワイン)の生産は少なく、全体の約10%ほどしか生産されていません。
ドイチャーワインはやや甘口で飲み口の良いワインが多いです。
ドイツだけではなくEU内のブドウを原料とした場合はターフェルヴァインと呼ばれます。
スペイン
ヴィノ・デ・パゴ
ピラミッドの頂点に位置する格付けが、単一ブドウ畑限定高級ワインのヴィノ・デ・パゴです。
ワインづくりに適した気候・土壌などのテロワールが突出した、限定された畑で生産されているため、個性が現れます。
デノミナシオン・デ・オリヘン・カリフィカーダ
ピラミッドの上から2段目に位置する格付けが、特選原産地呼称ワインのデノミナシオン・デ・オリヘン・カリフィカーダです。
特選原産地呼称ワインは、DOCa(デーオーセーアー)とも呼ばれており、原産地呼称ワインの認定から10年以上経過した中から厳しい基準で昇格が認められた高品質なワインのことを指します。
デノミナシオン・デ・オリヘン・カリフィカーダに格付けされているのは1991年にリオハ、2009年にプリオラートが指定されています。
デノミナシオン・デ・オリヘン
ピラミッドの上から3段目に位置するする格付けが、原産地呼称ワインのデノミナシオン・デ・オリヘンです。
許可されているブドウ品種を地域内で栽培されたブドウを使用して造られた上質なワインを指します。
2018年時点で76つ認定されており、スペインで生産されるワインの3分の2を占めているため中核的カテゴリーとなっています。
ヴィノ・デ・カリダ・コン・インディカシオン・へオグラフィカ
ピラミッドの上から4段目に位置するする格付けが、地域名称表示付きワインのヴィノ・デ・カリダ・コン・インディカシオン・へオグラフィカです。
2003年に新しくできた格付けで、ヴィノ・デ・カリダと省略して呼ばれることもあります。
特定の地域で収穫されたブドウを原料として醸造・熟成されたワインを指し、地域性が表現されたワインになります。
一部、デノミナシオン・デ・オリヘンの認定種を利用していないからという理由で昇格ができない品質の高いワインも存在しています。
この格付けで5年以上の実績を積んだ生産地は、ひとつ上の格付けの原産地呼称ワインへの昇格を申請することができます。
ビノ・デ・ラ・ティエラ
ピラミッドの上から5段目に位置するする格付けが、保護地理的表示のビノ・デ・ラ・ティエラで、地方ワインやカントリーワインのことを指します。
ビノ・デ・ラ・ティエラは、格付け名称のあとに町や郡や地方名が併記されたもので、地域名を冠したテーブルワイン的な存在であるともいえます。
フランスにおけるヴァン・ド・ペイにあたる位置づけで、使用される樽の容量は600リットルが上限となっています。
ビノ・デ・ラ・ティエラにはビニェードス・デ・エスパーニャが含まれます。
ビニェードス・デ・エスパーニャとは、2006年に安価な輸入ワインと区別するために設けられたカテゴリーです。
ガラス製の瓶だけではなく、バッグ・イン・ボックスに詰めることも可能なワインですが、一部の銘醸地域ではその使用が禁止されています。
保護地理的表示の上段には、保護原産地呼称、デノミナシオン・デ・オリヘン・プロテヒーダと呼ばれるカテゴリーがあります。保護原産地呼称のカテゴリーは、さらに4つの格付けに分類されます。
ビノ・デ・メサ
ピラミッドの底辺にあたる格付けとして、テーブルワインと呼ばれるカテゴリーがあります。
テーブルワインの格付けはビノ・デ・メサと呼ばれるもので、一般的に大量生産されるワインのことを指します。
ビノ・デ・メサは、格付けのない地域や畑で栽培されたブドウを使用、あるいは醸造所が域外にあったり、異なる地域や畑のワインをブレンドしてつくったワインの総称です。
ラベルには、地域名、ブドウ品種名、収穫年などの表示が一切認められていません。
スペインワインの年間生産量の75%を占めています。
アメリカ合衆国
ヴァラエタル
アメリカで最も有名な分類に、ヴァラエタルワインというものがあります。
これは、ブドウ品種名表示ワインのことであり、1本のワインに75%同一品種が使用されていた場合にラベルに表記することができる決まりです。
ただし、同一地域内で収穫されたブドウでなければいけないため、AVAや州名、群名によってそのパーセンテージが変わってきます。
カリフォルニアというラベルを使いたい場合、ヴァラエタルワインはカリフォルニア州のブドウを100%使用していなければいけません。
高級ワインに多いパターンであり、単一品種で造られているものがこれに当てはまります。
プロプライアタリ―
プロプライアタリ―ワインは、アメリカ国内のワイン生産者が独自の名前をラベルに掲げているワインのことです。このランクのワインは上級ワインに分類されます。
フランス(A.O.Pに基づく)ではこのランクに該当するワインは存在しません。
カベルネソ ーヴィニヨンやカベルネソフランなどで栽培された品種をブレンドしたものはメルテージワインと呼ばれています。有名どころでは、オーパスワンなどが挙げられます。
ジェネリック
アメリカでいう、ジェネリックワインは、さまざまな品種をブレンドしたワインです。
日常消費用ワイン、つまり普段飲み用のカジュアルなワインであり、安価なものがこれに当たります。
ジェネリックワインは、レッドワインとかホワイトワインなど、ざっくりと記載されているものや、ヨーロッパの産地名がつけられたものもありますが、近頃では見なくなりました。